|
ロシアンクロノグラフの軌跡 BETA版 |
|
序: 1999年に、「ムーブメント列記」のビーナス及びバルジューのコーナーにおいて、「POLJOT3133はValjoux 7733のコピーである」 と記した。 その後、この情報を鵜呑みにした複数の時計雑誌や他の時計サイトが、 「POLJOT3133はValjoux7734のデッドコピー」 と記してしまい、いつのまにか筆者の書いた推測が定説と化してしまった。 本当にデッドコピーなのだろうか?いくらなんでもパクリも度が過ぎており、部品の互換性もある。あの権利にうるさいスイス人が、ここまで露骨にパクられて、黙っているであろうか?パテントの問題はどうなのか? そもそも、Poljot3133とは何だ?という疑問が湧き、今日まで情報を収集しつづけた。 ある日偶然、スイス人の時計技術者とEメールの交換を行った。すると、彼は元エボーシュ社の社員であり、わずかであるが、Poljot3133の誕生の経緯を知っているということであった。筆者は過去に調べた内容を彼に伝え、彼からPoljot3133誕生秘話を聞き出した。 ここに、筆者が調査した内容と元エボーシュ社の社員の方から教えていただいた内容を複合して記したい。 尚、今回の情報も誤りがある可能性は十二分にある。お願いだから、頼むから、時計雑誌のライターの方や他の時計サイトの製作者の方々、パクリはやめて、参考にする際は情報の引用元として当サイトのアドレスを記していただきたい。自身の書いた誤った情報が、いつのまにか情報の出所が不明のまま引用され、定説化してしまうのは非常に恥ずかしい。 せめて誤情報の責任はとりたい。 注:このページはA4縦印刷に最適化しています。 歴史: 1930年まで、ソビエト連邦はスイスやフランスドイツから時計を購入していたが、アメリカ合衆国の2箇所の時計製造工場を買収し、1930年4月から製造開始した。 1935年、海軍用に海中時計型クロノグラフ「Kirov85」の開発に成功した。
1941年にナチスドイツ軍の侵攻に備えウラル地方に工場を疎開。
この時期にロシアンウオッチを購入した人々の脳裏には「ロシアンウオッチは壊れやすい」「保証が切れると自動的に壊れるポレオットタイマーが搭載されている」という、負の印象が強く残ってしまった。 |
||||||||
ムーブメント比較1
|
Poljot3017(19石/5.5振動?) |
Venus150(17石/5振動) |
|
クロノグラフランナーのランナーの受け(カタツムリの頭状の板)の形状を除き、2つのムーブメントは余りにも似すぎている。 どちらも、ピラーホイールの柱の数は7本。キャリングアームとスライディングギアを採用。 ただし、Venus150には耐震装置を採用したモデルがあるが、Poljot3017には耐震装置を採用したモデルが無いらしい。(本当はライセンス生産したのではないのか?現在も情報収集中) |
|
![]() |
![]() |
ムーブメント比較2
|
Poljot3133(23石/6振動) |
Valjoux7733(17石/6振動) |
|
クロノグラフランナーのランナーの受け(カタツムリの頭状の板)の形状を含み、2つのムーブメントは余りにも似すぎている。 2つは同じ設計書を元に製造しているので、似ているのは当然であろう。単なるライセンス生産ではなく、磨耗しやすいホゾにルビーを追加し、Valjoux7734が17石であるのに対しPoljot3133は23石になっている。他に逆ネジのネジの頭の構造や、カムのチェンジャーの構造等の改良も加えられ、Valjoux7734とPoljot3133の部品の互換性は100%ではない 。実際に相互の時計を分解し、部品を交換したところ、交換した部品によっては正常に作動しなかった。 |
|
![]() |
![]() |
ムーブメント比較3
|
Poljot3133(23石/6振動) |
Venus188(ガラ)(17石/5振動) |
|
Venus188はカム式、動力伝達方式:キャリングアーム式、スライディングギア採用している。 1948年から製造され、大成功しビーナス社の倒産の危機を救った名機。 ライバルであるランデロン社の低価格ムーブメントに対抗して開発された、Venus社の戦略的なムーブメントである。 新方式のカム式ムーブメントは信頼性に富、それでいて製造コストが低いので販売価格も抑えられた。市場はVenus188を歓迎し、激戦の2レジスタークロノグラフムーブメントの世界における、ビーナス社の起死回生のヒット商品となった。 尚、ライバルのランデロン社はVenus188に対抗できず、1950年代以降は新たなるクロノグラフムーブメントの開発を断念した。 ビーナス社倒産後はバルジュー社でValjoux7730という名で製造が継続され、Valjoux7733に発展していき、最後は名機Valjoux23や72の息の根を止めた。 Poljot3133はそんな名機Venus188の血をより強く受け継いでいる。決して単なる安物クロノグラフではない(と思う)。 |
|
![]() |
![]()
|
| - Valjoux7734採用の理由(その歴史的背景): 何故、エボーシュ社はValjoux7734の製造機械と製造ライセンス契約をソビエト連邦のモスクワ第1時計公社に売却したのであろうか? 実は前年の1973年、バルジュー社は自動巻きムーブメントであるValjoux7750の開発に成功した。そのため、バルジュー社は機械式クロノグラフは、すべてValjoux7750に置き換える計画を立てた。 実際、1973年にValjoux7730(Venus188)の製造を中止し、1974年にValjoux23及びValjoux72という半世紀以上作りつづけてきたムーブメントの製造を終了し、さらにValjoux7733の生産数も大幅に減産した。 加えて、当時は日本及びアメリカ合衆国の時計製造会社によるクオーツ時計やデジタル時計の猛攻により、スイスの時計産業は大打撃を受け、倒産する企業が相次いだ。 エボーシュ社は、生産終了したValjoux7730と、減産したValjoux7734の、不要になった製造ラインを売却することにより、Valjoux7750の開発費に投資した莫大な負債の穴埋めを狙ったのである。 尚、当時スイス国内で失業していた旧ビーナス社の技術者(一説では約25名)が、ソビエト連邦に高給で迎え入れられ、Valjoux7734の改良と現地生産化に協力したことはあまり知られていない。 どうしてスイスから製造ラインを購入したのであろうか?他に、日本でも機械式クロノグラフの製造は行われていた。スイスの時計産業が不況にあえいでいたのに対し、日本の時計産業は好況だったから、日本は製造ラインの売却に乗り気ではなかったのか? 実は、当時の日本はCOCOMに加盟しており、軍事目的に転用できる高度な技術は、共産圏には輸出できなかった。 それに対してスイスは中立国であり、COCOMにも加盟しておらず、『もはや、軍事目的に転用できる高度な技術ではない』として、クロノグラフの製造ラインを輸出したようである。
こぼれ話
オマケ 素人が作成したHPですが、表示する内容を無断で転用・転載することを禁止いたします。転用・転載の際は連絡ください。 |
||||||||||||