Lemaniaの道

序.

かつて、スイスの時計産業には、ASUAGとSSIHという2大コンツェルンが存在した。
ASUAGの中核であったエボーシュ社の傘下には、3つのクロノグラフムーブメントメーカー、ランデロン・ビーナス・バルジュー社があった。
ASUAGのライバルであるSSIHに、上記3社に対し、たった1社で拮抗しえた時計メーカーがあった。

レマニア社。
かつては、SSHIグループ内で優秀なクロノグラフムーブメントを作成し続けた。
ライバルであった、ランデロン・ビーナス・バルジュー社は、クオーツショックと機械式時計の冬の時代のなか、法人としては霧消してしまった。
しかし、レマニア社は今迄は法人として生き残って来た

でもこれからは?

  

2.歴史

1884年 スイスのロリエントにレマニア時計会社として設立された。

1912年には、すでにオメガ用のムーブメントを作成していた。

1932年 SSHIグループ(オメガを中核とした持ち株会社・ティソやラドー・ロンジン等も同グループ)の傘下となる。

これ以降SSIHグループから脱退するまで、SSIH内の各時計メーカー用の複雑時計のムーブメントの作成や、自社銘の時計を生産し続けた。

1970年代のクオーツショックで、SSIHグループは壊滅的な打撃を被り、存亡の危機をむかえ、企業の合従連衡及び倒産が相次ぐ。

1981年にブレゲの資本投入(買収)により、SSIHグループから離れヴァンドームグループの傘下に移行し、社名もヌーベル・レマニア社に変更。

ヌーベル・レマニア社を直訳すると、「新レマニア社」である。

1980年代、バルジューがCal.23や72の生産を終了したことにより、バセロンやパテック等の高級ラインは

ほぼレマニアのムーブメントに鞍替えした。

1982年 かつてのライバル、ASUAGとSSIHの両グループが合併し、ASUAG-SSIHとなる。

1985年 ASUAG-SSIHはSMHと社名変更。

1998年 SMH社はスオッチグループに社名変更。

1999年に、親会社的存在のブレゲが、スオッチグループに買収された為、ヌーベル・レマニア社もスオッチグループの一翼をはたすことになる。

つまり、17年ぶりに、オメガとレマニアは、同一グループになった。 

 

3.役割

SSHIグループ時代は、グループ内で「クロノグラフムーブメントの工場」的な役割をはたした。

オメガ社のクロノグラフは、スオッチグループの傘下に入る以前は、100%レマニア社のムーブメントを採用した。

有名なスピードマスタープロフェッショナルのムーブメントもレマニア製である。

この頃のオメガのクロノグラフのムーブメントは、オメガがレマニアにスペックを発注し、レマニアにて設計・製造後に納品された。

注:ティソは、1950年代末までは自社に開発力があり、「レマニアのムーブメントを独自に改造して使用した」ということであるが、詳細は未確認である。

レマニア社とエボーシュ連合のランデロン・ビーナス・バルジューと異なる点は、レマニア社はムーブメントメーカーでありながら、さらに「LEMANIA」銘の自社ブランドの時計も製造していたことである。

「LEMANIA」銘の時計は、クロノグラフのみでなく、女性用や中三針の通常の時計も発売されていた。

1999年に、ヌーベル・レマニア社はスオッチグループ傘下となり、新たな役割を担うことになる。

4.ムーブメント紹介

 

Lemania 15TL

レマニア銘の提げクロノ

年代不明

作動原理:ピラーホイール式(ピラーの柱は7本)

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア採用

チラネジ有り

耐震装置有り

永久秒針:6時位置

分積算計:12時位置

スライディングギアのスライドする方向が、後に主流となる腕時計用クロノグラフムーブメントと、180度異なる。

このムーブメントを改良し、1932年のロサンゼルスオリンピック用にスプリットセコンドクロノグラフも作成された。

なお、Lemania 15TLは腕時計クロノグラフにも搭載された。

Lemania 27CH(Omega320)

1943〜45年製造

作動原理:ピラーホイール式(ピラーの柱は8本)

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア採用

チラネジ有り

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

分積算計:3時位置

直径27mm

1940年にオメガからレマニアに、ムーブメントの開発が依頼された。

レマニアのアルバート・ピゲが開発に携わり、1942年に完成した。

後には、3つ目のLemania27CH C(Omega321)が初代スピードマスタープロフェッショナルに搭載された。

オメガの特徴である赤金メッキが施されていない。

Lemania 27CH(自社用−レストア中)

1943〜45年製造

作動原理:ピラーホイール式(ピラーの柱は8本)

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア採用

チラネジ有り

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

分積算計:3時位置

直径27mm

Lemania銘のクロノグラフにも、27CHは搭載された。

尚、Lemania27CHは、現在もLemania2310という名称で生産され続け、現行のパテックィリップも採用している。

 

Lemani1270

1960年代製造

作動原理:カム式

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア採用

チラネジ無し

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

分積算計:3時位置

直径27mm

ピラーホイール採用の27CHと、カム式の1872の中間的ムーブメント。

Lemania社は、ピラーホイール式の27CHを元に、カム式の1270を開発し、その後1270からスライディングギアを除いた1872を開発した。

製造コストは、27CH>1270>1872である。

 

Lemani1872系(OMEGA 860系)

画像はOMEGA 910

1972年製造

作動原理:カム式

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア不採用

チラネジ無し

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

分積算計:3時位置

時積算計:6時位置

直径27mm

現行のスピードマスタプロフェッショナルのムーブメントとほぼ同じ。

Lemania1872(OMEGA 861)と比較し、一部歯車のメッキが省略されている。

尚、Lemani1872系(OMEGA 860系)の12時間積算計は、クロノグラフ停止時も常時回転しようとする力が加わっている。

回転しようとする歯車を、ストッピングレバーで強制的に停止させているが、ストッピングレバーの故障により、クロノグラフ機能停止時も12時間積算計は動きつづけることもある。

 

Lemania1872(OMEGA861)の時計

 

Lemani1872系(OMEGA 860系)

画像はLemania3872(OMEGA 930)

1970年製造

作動原理:カム式

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア不採用

チラネジ無し

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

分積算計:3時位置

直径27mm

 

赤金メッキが施されている。

Lemani1340(OMEGA 1040)

1970年製造

レマニア初の自動巻きクロノグラフ

作動原理:カム式

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア不採用

チラネジ無し

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

秒及び分積算計:センターに配置

1970年に開発され、現在もLemania1350系として生産されている。

又、EBELが5年の歳月を費やして開発したといわれる「ル・モデュロール」は、Lemania1350を改造したもの。

Leman5100(OMEGA 1045)

1974年製造

作動原理:カム式

動力伝達方式:キャリングアーム式

スライディングギア不採用

チラネジ無し

耐震装置有り

永久秒針:9時位置

秒及び分積算計:センターに配置

24時間表示:12時位置

1974年に開発され、現在も生産されている。

NATO軍用のミルスペックに適合し、多くの時計メーカーが採用した。

5.ムーブメント比較

オメガ用27CHとレマニア自社用27CHの比較:

オメガの特色である赤金メッキが施されていな。又、仕上げに付いても大差無い。

 

オメガ用27CH

レマニア自社用27CH(レストア中)

進化の過程1

先ず、ピラーホイール式の27CHを元に、カム式の1270が開発された。

27CH(ピラーホイール式)

1270(カム式)

進化の過程2

カム式の1270を元に、スライディングギアを省略した187Xを開発した。

1270(カム式−スライディングギア有り)

187X(カム式−スライディングギア無し)

手巻きLemania187Xと自動巻きLemania1340の比較:

キャリングアームやカム切り替え機周辺の部品の形や構成が酷似している。

手巻きのムーブメントを原形として、自動巻きのムーブメントを作成したことがうかがえる。

手巻きLemania187X

自動巻きLemania1340

自動巻きLemania1340と自動巻きLemania5100の比較:

クロノグラフの機能やダイアルが似通った2つのムーブメントは、実際はまったく異なる機械ということがわかる。

クオーツショックによるコストダウンの必要に迫られ、Lemania5100にはプラスチック部品が大幅に採用されている。

時計の分解掃除時は、調整するよりも「ユニットごと交換」という発想が出てきたのも、Lemania5100が開発されたころからである。

Lemania1340

Lemania5100

9.終章 歴史は繰り返す

かつて、SSHIグループでクロノグラフムーブメントの製造の中核を担ったレマニア社は、今はスオッチグループ傘下のムーブメント製造会社となった。

今後グループ内でETA社とレマニア社、さらにはフレデリックピゲ社の役割分担が決するであろう。

あたかも、昔日のランデロン・ビーナス・バルジュー社の役割分担を連想させる。

 

過去:廉価版のランデロン社。廉価版及び中級や高級版のビーナス社。中級や高級版のバルジュー社。

未来:廉価版のETA社。廉価版及び中級や高級版のレマニア社。中級や高級版のフレデリックピゲ社。

 

名称は変化したが、行っていることは同じである。

グループの制約により、レマニアの長所がスポイルされないか?気がかりではある。

ヌーベル・レマニア社が、このまま法人として存在し続けるか?

かつてのランデロン・ビーナス・バルジュー社のように、ETA社の一部門になってしまうのか?

甚だ心配である。

 

1999/10/26 ベータ版文章のみUP
1999/11/3 一部の画像UP
1999/11/4 本格運用
2000/10/25 Lemania1270追加

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 あなたは人目の、ヌーベル・レマニア社が心配な方です。


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